表参道眼科マニア

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レーシックのリスク、合併症について その2

   

前回に引き続き、レーシックのリスク、合併症について記述します。

 

レーシックのリスク 時間経過によって回復しないもの

フラップにしわが寄る、ずれる

【発症時期】 
レーシック手術直後~1週間 (強い衝撃を受けた場合は数年後も起こり得る)

【原因】  
手術直後に眼をぶつける、強くこするなど

【症状】   
視力の低下、痛み

【治療方法】 
フラップを持ち上げて整復する

【解説】レーシック手術は角膜にフラップを作成し、元に戻す行程がありますが、手術後1週間ほどは吸着が弱いため、こすったり、外的な圧力によりしわが発生することがあります。非常に小さく視機能に影響がないしわをマイクロストリエ(micro striae)といい、この場合は自然になじむのを待ちますが、視機能に影響を及ぼしている場合は洗浄処置が必要となります。

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また、手術後だいぶ経過している場合でも、強く眼をぶつけてしまうとフラップずれが生じる可能性があります。眼に強い衝撃が生じた場合は必ずレーシックを受けたクリニックを受診してください。

 

ハロー、グレア現象 コントラスト感度の低下

【発症時期】  
レーシック手術後

【原因】  
角膜の形状を変えることにより、高次収差(眼の細かな歪み)が手術前より増えるため
角膜フラップの切開縁による影響
照射径移行部の段差
術後早期の角膜浮腫、ドライアイ、しわによるもの
層間炎症
角膜の形状が不正、もしくは術前の収差が大きい

【症状】  
夜間に光源を見た際、光のにじみ、ぎらつきを感じる
わずかな色の濃淡(コントラスト)による差が分かりにくくなる、視力は出るがなんとなく見えにくい

【治療方法】  
自然経過による緩和、カスタムレーシックによる追加矯正、ハードコンタクトレンズ、低濃度縮瞳薬など

【解説】
レーシックによって角膜の形状が変化すると、眼の細かな歪みである高次収差(レーシックでは主に球面収差、コマ収差)が増加します。収差についてはこちら
高次収差の増加は日中の見え方に影響を与えることはほぼありませんが、暗くなり瞳孔が広がると、光のにじみやぎらつきなどハログレア現象に影響します。

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レーザーテクノロジーの進化に伴い、ウェーブフロント照射などできるだけ高次収差を増やさない術式もでてきましたが、光学中心を切除する術式では原理的に高次収差の増加は避けられません。特に近視、乱視度数が強い、瞳孔が大きい、角膜の歪みが大きい、夜運転することが多い、またセンシティブな方にはあらかじめハログレアの症状が出やすいことをしっかりと説明し、場合によっては眼鏡やコンタクトレンズ、ホールICLなど別の屈折矯正治療をお勧めする場合があります。

 

過矯正、屈折誤差

【発症時期】
レーシック手術後

【原因】
レーザーのキャリブレーション誤差、視力検査時における誤差、手術中の角膜の乾燥状態などにより、矯正量が多いほど矯正精度が低下し誤差が出やすくなる。また角膜実質の創傷治癒過程で屈折が変化する場合がある。

【症状】
ピントが合うのに時間がかかる、眼精疲労、見えにくいなど

【治療方法】
眼鏡、コンタクトレンズ
残存角膜厚が十分あれば再手術

【解説】
機器の進歩により以前よりも矯正誤差は少なくなっていますが、レーシックを行う前に自覚的屈折度数、他覚的屈折度数に大きな乖離がないか、仮性近視では無いか、角膜形状は安定しているか、屈折に影響を与えるドライアイはないかなどをよく確認し、場合によっては経過観察もしくはレーシックを勧めないケースもあります。

また、過矯正に関しては視力の戻りを考慮し強めに照射することを良しと考えるクリニックもあります。(過去記事参照)デスクワークが多い方などは低矯正の方が良い場合もありますから、検査や治療説明の際にしっかりと自分の希望、意志を伝えてください。

 

ケラトエクタジア(角膜拡張症)

【発症時期】
レーシック手術後

【原因】
円錐角膜、角膜が薄めの症例、特殊な形の角膜などの無理に手術を行った場合に発症したという報告が多い

【症状】
近視、不正乱視の発生に伴う裸眼、矯正視力低下、コントラスト感度低下、ハロ・グレアの増強

【治療】
ハードコンタクトレンズ、クロスリンキング、角膜内リング挿入、極めて重度の場合は角膜移植

手術学会スライド(トポ)訂正分

 

 

【解説】
1万人に1人という非常に低い発症率ですが、レーシック後もっとも重篤な合併症といえます。レーシックの適応検査はケラトエクタジアを避けるためにある、と言っても過言ではありません。

前提として、円錐角膜という元来角膜強度が弱い眼にレーシックを行うことは症状を進行させてしまうため絶対禁忌です。
ただ問題なのは円錐角膜は進行性の疾患であるため、ごく初期であると円錐角膜かどうか見分けがつかないのです。特に角膜の前面のみをみるトポグラフィという器械だけでは、初期は角膜後面が変形する円錐角膜を見逃してしまう可能性があります。最近はCASIA(TOMEY社)など前眼部OCTという角膜前後面を詳細にチェックできる器械を導入しているクリニックも増え、以前よりもケラトエクタジアのリスクは軽減傾向にあります。

レーシック術後、万が一角膜形状が変化している場合はクロスリンキングなど進行抑制の治療が必要となりますから、1年に1度は必ず術後検診を受けるようにしてください。

 

 

 - レーシック, 合併症, 近視回復治療